動的核スピン偏極とは,磁気共鳴法により電子スピンから核スピンに偏極移動させることで熱平衡時をはるかに上回る核スピン偏極度を得る手法である。我々は電子・粒子線照射高分子試料の動的核スピン偏極・緩和速度が,放射線分解により生じたフリーラジカル濃度に正比例することを見いだした。一方,安定ラジカルを化学添加した試料では濃度の自乗に比例した。本結果は,化学添加試料中では偶然に近接した2つの安定ラジカルが偏極を担うのに対して,放射線照射試料中ではスパー内の複数のフリーラジカルが担っていることを示す。照射温度を制御しスパー内におけるラジカル間距離を最適化すれば,より高い偏極度が得られると期待される。