公開シンポジウム「量子ビームで創る新しい生命科学:X線からテラヘルツまで」

概要
 近年のテラヘルツ光技術の進展に伴い,その生体照射影響に関する研究が盛んになりつつある.テラヘルツ光子のエネルギーはタンパク質や周囲の水分子の運動に相当するため,照射によって生体内の分子ダイナミクスの変化が誘起され,細胞機能に影響が現れる事が,実験的に示されつつある.一方,放射光で発生する軟X線では元素選択的な化学構造や電子状態の分析が可能であるとともに、状態選択的励起を積極的に利用した、分子内の特定の部位に特異的な状態を選別して誘起させることができるようになると期待されている。最近では試料周辺技術の発展により生体分子を生理環境下において分析することも可能になっており、細胞内の環境を模した分光実験や照射実験も可能となっている。
これまで敷居が高かった高強度テラヘルツ光やX線放射光の利用が,容易にアクセスできるようになると,それらの量子ビームを組み合わせた研究が可能になる.特にテラヘルツ光や軟X線は,生体高分子や水に対する感受性が高いため,たとえばテラヘルツ光で誘起した生体高分子の構造とダイナミクスの変化をX線で高感度にプローブするなど,生体分子を観測・制御する新しい研究が生まれる可能性がある.本シンポジウムでは,量子ビーム,テラヘルツ,細胞生物学など,これまであまり交流の無かった研究者を分野横断的につなぐ事で,各自の研究手法を組み合わせた新しいサイエンスを生まれる事を期待する.

主催 東北大学農学研究科付属放射光生命農学センター

共催 理化学研究所
量子科学技術研究開発機構

協賛 量子生命科学会
テラヘルツテクノロジーフォーラム
応用物理学会テラヘルツ電磁波技術研究会
分光学会テラヘルツ分光部会

日時 2022年 1月 21日

場所 東北大学 青葉山コモンズ (オンライン(Zoom)とのハイブリッド開催)

参加費 無料

参加者:30名
プログラム

13:30~13:40 「はじめに」 原田昌彦(東北大)
13:40~14:10 「テラヘルツ光生体照射の現状と展望」 保科宏道(理研)
14:10~14:40 「テラヘルツ光照射に伴うタンパク質水和状態の変化の核磁気共鳴法による解析」 徳永裕二(東大)
14:40~15:10 「ポリメラーゼ反応へのTHz波照射作用とsub-THz波照射作用」 今清水正彦(産総研)
休憩
15:20~15:50 「生体分子複合体へのTHz光の作用:放射光利用と細胞機能操作の可能性」 原田昌彦(東北大)
15:50~16:20 「放射線DNA損傷に対する水和水の寄与の軟X線分光を用いた解析」 藤井健太郎(QST)
16:20~16:50 「ラマン分光を用いた水素結合性液体および細胞内にある水の状態解析」 中林孝和(東北大)
16:50~17:00 「おわりに」