2022年 学会誌 第113号

会誌「放射線化学」(ISSN 2188-0115

■2022 No.113 PDFファイル・全ページ

巻頭言

「私の人生と日本放射線化学会との出会い」
堀邊 英夫(大阪公立大)[PDFファイル

 

特集記事:三次元ゲル線量計

「はじめに:三次元ゲル線量計特集にあたって」
林 慎一郎(広島国際大学)[PDFファイル

 

特集記事:三次元ゲル線量計

「ポリビニルアルコール-ヨウ素錯体の発色を利用したラジオクロミックゲル線量計の開発」
林 慎一郎(広島国際大学)[PDFファイル

放射線治療における線量評価のために,三次元ゲル線量計の開発および臨床応用が精力的に行われている.特に,光学CTを用いて読み出すことができるラジオクロミックゲル線量計は,その利便性から注目されている.最近,ポリビニルアルコールとヨウ化物の錯体形成による発色を利用したPVA-IおよびPVA-GTA-Iラジオクロミックゲル線量計が提案された.本稿では,その基礎特性について紹介する.

 

特集記事:三次元ゲル線量計

「ラジオクロミックゲル線量計の臨床応用 −反復利用型PVA-Iゲル線量計を用いた3次元Winston-Lutzテスト−」
小野 薫,池田 幸恵,藤野 圭介,栗原 凌佑,赤木 由紀夫,廣川 裕(広島平和クリニック),林 慎一郎(広島国際大学)[PDFファイル

ラジオクロミックゲル線量計は,光学CTで吸光度を計測することで3次元線量評価に用いられるが,本邦ではその臨床応用が広まっていない.そこで,われわれは汎用のフラットベッドスキャナを光学濃度の読み取り装置として使用し,ラジオクロミックゲル線量計の臨床応用の可能性について研究を行っている.本稿では,脳腫瘍に対する定位放射線治療(SRS,stereotactic radiosurgery)の品質保証(QA, quality assurance)として考案した3次元Winston-Lutz(WL)テストを紹介する.ゲル線量計は,われわれが開発したアニーリングにより反復利用が可能なポリビニルアルコール/ヨウ化物(PVA-I)複合体をベースとしたPVA-I ラジオクロミックゲル線量計を用いた.そして,位置検出器としてタングステン球をゲル中に留置したWLゲルファントムを作製した.アイソセンタ位置の解析にはフラットベッドスキャナを使用し,照射野と球の重心間距離から3次元アイソセンタ変位を算出した.この手法から求めた3次元アイソセンタ変位は,一般的にWLテストに用いられるEPID(Electric portal imaging device)で計測した結果と比較して0.1 mm以内の差で一致した.これらの結果は,WLゲルファントムによる高いアイソセンタ位置検出能と信頼性を証明した.また,1つのWLゲルファントムを用いて行った長期間のSRSアイソセンタ位置検証では,照射とアニーリングを繰り返すことで良好な再利用性が確認された.本研究で開発した3次元WLテストでは,容易で迅速なプロセスによる高精度なアイソセンタ位置解析が可能であり,さらにPVA-Iゲル線量計の優れた再利用性からSRSルーチンQAにおける有用性が示唆された.

 

特集記事:三次元ゲル線量計

「蛍光ゲル線量計の新展開」
前山 拓哉(北里大)[PDFファイル

ゲル線量計は生体等価材料中の3次元線量分布を評価可能な唯一の線量計であり,放射線治療における品質保証ツールとして利用が期待されている.一方で,線量計感度の向上が一つの課題である.近年,我々は水溶液線量計の中で最も感度が高い蛍光水溶液線量計をゲル線量計に応用することに成功した.Nanoclay-based radio-fuorogenic gel(NC-RFG)と呼び,蛍光プローブと数wt%のナノクレイから調製される.本研究ではこのNC-RFG蛍光ゲル線量計に関して得られている最近の結果について紹介する.

 

特集記事:三次元ゲル線量計

「三次元ゲル線量計による高線量率小線源治療の線量分布測定」
渡邉 祐介(北里大)[PDFファイル

高線量率小線源治療(HDR brachytherapy)は,Remote after-loading system(RALS)を使用して,放射性同位元素を腫瘍内またはその近傍に輸送して近接照射する.HDR brachytherapyでは,立体的な線源配置による複雑な線量分布を正確に検証するには,三次元線量分布を実測することが理想である.本稿では,HDR brachytherapyにおける三次元ゲル線量計の有用性について述べるとともに,ポリマーゲル線量計と蛍光ゲル線量計を使用した高線量率Ir-192線源によるHDR brachytherapyの線量分布測定について述べる.

 

特集記事:三次元ゲル線量計

「炭素イオンビーム照射におけるミセルゲル線量計の反応性」
五東 弘昭(横浜国立大),蓑原 伸一,草野 陽介(神奈川県立がんセンター),豊原 尚実(横浜国立大,東芝エネルギーシステムズ株式会社)[PDFファイル

ミセルゲル線量計は,複雑な3次元線量分布を測定することができる.しかし,X線以外の放射線の測定に適用された例は殆どない.本稿では,ミセルゲル線量計の臨床用炭素イオンビーム照射に対する放射線特性を評価した我々の最近の研究について概説する。行った実験条件下においては, 計測したブラッグピークの位置が治療計画とミセルゲル線量計の測定結果で一致することが確認された.また、炭素イオンビーム照射時に生成される化学種を,モンテカルロシミュレーションにより予測した.計算結果と測定結果を比較したところ, ミセルゲル線量計の反応量は炭素イオンビームにより生成されるOHラジカルの量と関係性があることがわかった.

 

特集記事:三次元ゲル線量計

「三次元ゲル線量計のためのOpticalCTの開発」
小林 毅範,緒方 祐貴,久保 匠(帝京大),姜 裕錫(自治医科大学附属病院),東郷 春輝(国立がん研究センター東病院),齊藤 優樹(東京医科歯科大学病院)[PDFファイル

三次元的な線量分布の測定が可能なゲル線量計は,特に放射線治療分野で線量検証用の線量計として国内外で注目されている.ゲル線量計と言っても,ゲルの種類とそのゲルの反応機序による線量の読み取り方法などの違いによっていくつかの組合せが考えられる.我々は,作製・廃棄が比較的容易な点,使いやすさの点,高分解能の測定が可能である点などから色素ゲルと読み取り装置としてOptical CTを用いる組合せを最終的に選択した.我々の使用している色素ゲルは,色素としてLeuco Crystal Violet(LCV)を用いている.またOptical CTにはLCVのピーク吸収波長に近い波長をもつ光源を利用している.総合的な性能評価のために行った治療領域での照射では,臨床現場で線量検証によく使われている半導体検出器と同等の結果が得られることを確認した.最後に開発したOptical CTを診断領域のX線CTに用いた最近の研究成果について簡単に紹介する.

 

特集記事:三次元ゲル線量計

「ポリマーゲル線量計評価用光学CTにおける屈折率変化の影響」
川村 拓(群馬県立県民健康科学大学),高梨 宇宙(理研),新木 佳友(宇都宮セントラルクリニック)[PDFファイル

本論文ではポリマーゲル線量計(PGD)の応答評価用光学CTおよびその画像形成原理を紹介する.また光路長を一定に保つためPGD周囲を覆うマッチングリキッドの屈折率(RI)を1.33,1.37,1.41と変更した場合の画像への影響を検討し,MRIによる横緩和速度(R2 = 1/T2)およびフィルムの結果と比較した.光学CT画像にて測定した円形照射領域の半値幅(FWHM)はMRIおよびフィルムよりも大きくなる傾向があった.RIが大きい場合にもFWHMが大きい傾向となった.FWHMの結果から,マッチングリキッドのRIは1.47より1.33および1.37の方が適していることが示された.引き続き,屈折と散乱によるアーチファクトの改善および線量応答特性への影響についてさらなる調査と検討が必要である.

 

討論会の話題から

「燃料デブリの過酸化水素による酸化劣化に関する研究」
熊谷 友多,日下 良二,中田 正美,渡邉 雅之(原子力機構),秋山 大輔,桐島 陽,佐藤 修彰(東北大),佐々木 隆之(京大)[PDFファイル

 

討論会の話題から

「UVSOR-III」におけるガンマ線誘起陽電子消滅分光法の開発
平 義隆(分子研)[PDFファイル

 

討論会の話題から

「創薬応用を目指した放射線架橋ペプチド粒子の開発:放射線化学反応の解析」
上野 美穂,新井 唯史(群馬大),Hao Yu,山下 真一(東大),木村 敦,田口 光正(量研)[PDFファイル

 

討論会の話題から

「超短パルスレーザー加工現象の解明に向けたポンプ−プローブイメージングにおける干渉縞解析」
寺澤 英知,鷲尾 方一(早大),澁谷 達則(産総研),盛合 靖章,小林 洋平,坂上 和之(東大)[PDFファイル

 

討論会の話題から

「高エネルギー粒子線を用いた有機ナノワイヤ形成とその三次元構造制御」
信岡 正樹,神谷 昂志,関 修平(京大)[PDFファイル

 

会員のページ

「V. M. Byakov 先生を偲んで」
小林 慶規(早大)[PDFファイル

 

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