2023年 学会誌 第115号
会誌「放射線化学」(ISSN 2188-0115)
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■2023 No.115 [PDFファイル・全ページ]
巻頭言
「新型コロナ流行以降の研究活動」
藤塚 守(阪大産研)[PDFファイル]
展望・解説
「せめる/まもる」薬剤の探索;輪ゴムDNAの損傷評価」
余語 克紀(名古屋大学)[PDFファイル]
がん放射線治療では,処方線量はいぜん正常組織の耐用線量で決まり,治療効果が十分でない場合がある.副作用の少ない正常組織の放射線保護剤や,がん標的に対する放射線増感剤があれば,有用である.放射線による細胞死は,DNA損傷が引き金になる.したがって,候補薬剤が放射線誘発のDNA損傷に影響を与えるか調べることで,臨床応用に向けた第一歩となる.in vitroで放射線影響の修飾薬剤を素早くスクリーニングする方法として,高感度で簡単なプラスミドDNAアッセイがある.本稿では,この方法を用いた研究から,放射線増感剤としての金ナノ粒子と放射線保護剤としてのアミノ酸類の可能性を中心に紹介する.
とぴっくす
「生物と磁場とラジカル対機構」
ウッドワード ジョナサン,池谷 皐(東京大学)[PDFファイル]
Can biology be influenced by magnetic fields, including those as weak as the Earth’s? The answer appears to be yes and the mechanism allowing it is a remarkable mixture of quantum mechanics and chemical kinetics. In this article we introduce the fundamental ideas behind the underlying interaction mechanism, trace the path from its origins in chemistry to its current popularity as an example of quantum biology, highlight some of the pitfalls and missteps along the way and look to future experiments which may demonstrate beyond doubt its role in phenomena such as the magnetic compass ability of animals and beyond.]{Can biology be influenced by magnetic fields, including those as weak as the Earth’s? The answer appears to be yes and the mechanism allowing it is a remarkable mixture of quantum mechanics and chemical kinetics. In this article we introduce the fundamental ideas behind the underlying interaction mechanism, trace the path from its origins in chemistry to its current popularity as an example of quantum biology, highlight some of the pitfalls and missteps along the way and look to future experiments which may demonstrate beyond doubt its role in phenomena such as the magnetic compass ability of animals and beyond.
とぴっくす
「全フッ素化キュバンの電子捕捉」
駒口 健治(広島大学),杦山 真史(東京大学),秋山 みどり(京都大学),岡添 隆(AGC株式会社/東京大学)
[PDFファイル]
2022年8月,全フッ素化キュバン(C8F8)の合成に世界で初めて成功したことが発表された.このニュースは,国内だけでなく国外からも大いに注目を集めている.これまで不可能だったキュバンの全フッ素化に成功したことは特筆に値するが,最大の興味は,F原子8個の導入によって発現するC8F8の特異な性質にある.理論計算によると,C8F8のLUMOのエネルギーレベルは深く,高い電子親和力を有することから,一電子還元により,電子1個を箱型骨格内に安定に捕捉できると予測されていた.本稿では,全フッ素化キュバンのアニオンラジカルについて,放射線照射を利用する低温固相マトリックス単離法によって測定されたESRスペクトルとその電子構造について解説する
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「可視光を吸収する粉末酸硫化物光触媒における光キャリアダイナミクス」
松﨑 弘幸(産総研)[PDFファイル]
太陽エネルギーを利用して,光触媒によって水を光分解し,CO2排出のないクリーンエネルギーである水素を生成する研究は,近年大きな関心が寄せられ,太陽エネルギーを高い効率で利用するために,可視光を利用できる材料の開発が世界中で盛んに進められている.本稿では,可視光を吸収する粉末酸硫化物光触媒Y2Ti2O5S2について,高効率化への定量的な指針を得るために,過渡吸収分光測定と測定データの理論解析を行った.その結果,光キャリア寿命を始めとする種々の物性値を抽出することに成功した.さらに,得られた物性値に基づいたシミュレーション解析から,太陽エネルギー変換効率の向上の条件を明確化することができた.
とぴっくす
「Structural investigation of radiation-grafted polymer electrolyte membrane by SANS partial scattering function analysis」
趙 躍,吉村 公男,廣木 章博,前川 康成(QST高崎)[PDFファイル]
Radiation-grafted polymer electrolyte membranes (PEMs) are a promising alternative to the benchmark material Nafion® used for electrochemical devices like electrodialysis and fuel cells. To facilitate their applications, thorough understanding of the structure of this type PEMs is crucial. In this report, we introduced the partial scattering function (PSF) analysis through the contrast variation small-angle neutron scattering technique to quantitatively elucidate the hierarchical structure of the radiation-grafted PEM, made of poly(styrene sulfonic acid) grafting onto poly(ethylene-co-tetrafluoroethylene) base films, from micro- /nano- meter scale to molecular level. The analysis on PSF self-terms gave the exact structure of individual components and that on cross-terms explored the correlation between two components to establish their locations. The results provided mechanistic insights into membrane conductivity and structure correlations.
受賞記事
「ウラン酸化物の放射線による溶解挙動の研究」
熊谷 友多(原子力機構)[PDFファイル]
ウラン酸化物の放射線による酸化と水への溶解反応に関する研究は,使用済核燃料の地層処分を背景として進められてきた.またその知見は,原子炉過酷事故で形成される燃料デブリの化学的な安定性を検討する基礎となっている.本稿ではウラン酸化物の放射線よる化学反応に関して,既往研究についても取り上げ,受賞対象となった研究の背景や意義について紹介する.
受賞記事
「超短硬X線レーザーによる貴ガスクラスターナノプラズマの誕生と追跡」
熊谷 嘉晃(東京農工大学)[PDFファイル]
ナノ粒子への硬X線レーザー照射により誘起されるナノプラズマ形成現象の理解を目指し,貴ガスクラスターへのX線自由電子レーザー(X-ray Free Electron Laser; XFEL)のパルス照射にともない放出されるフラグメントイオンの飛行時間スペクトルを計測した.分子動力学計算結果との比較から,XFEL誘起ナノプラズマ形成に対する放射線化学反応の寄与を明らかにした.さらに,近赤外レーザーをプローブ光として用いた時分割計測により, XFEL誘起ナノプラズマ形成のごく初期段階において,その電荷再分配・エネルギー移行過程に対して励起原子の生成・失活が密接に関与していることを明らかにした.
放射線利用紹介
「佐賀県立九州シンクロトロン光研究センターのご紹介」
妹尾 与志木(公益財団法人佐賀県産業振興機構)
[PDFファイル]
海外レポート
「コロナ下でのIAEA/CRPミーティング参加報告」
櫻井 庸明(京都工芸繊維大学)
[PDFファイル]
お知らせ
「The 14th International Symposium on Ionizing Radiation and Polymers (IRaP2022) 参加報告」
神戸 正雄(阪大産研)[PDFファイル]
お知らせ
「第65回放射線化学討論会参加報告」
後藤 亜希(JAXA)[PDFファイル]
本会記事[PDFファイル・これ以降全て]
事務局より:理事会議事録等 (事務局)
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