放射線化学にとって1950年代後半から1970年代前半は黄金の時代であった.水和電子が発見され,液体炭化水素中のイオン過程について新しい現象がいろいろ見つかった。また,有機固体中で捕捉電子が発見され,電子のトンネリング現象が見つかった。当時放射線化学は理論的問題の宝庫であった。放射線化学に特有の問題だけでなく,一般物理化学の問題としても非常に面白い問題が沢山あった。この総説では,放射線化学の分野で発見された理論的問題が,その後一般物理化学の問題へとどのように発展していったかを,私の研究を中心にまとめた。