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■2012 No.93 [PDFファイル・全ページ(4 MB)]
- 巻頭言
- 展望・解説
- Radiation Chemistry of High Temperature and Supercritical Water
Mingzhang Lin(原子力機構), Yosuke Katsumura, Yusa Muroya(東大) [PDFファイル(848 kB)]
高温水・超臨界水の放射線化学研究は,近年ピコ秒・ナノ秒パルスラジオリシスが適用可能となり,新たな展開を見せ始めている。これまで高温研究を進めるにあたり計測手法にいくつか技術的な問題を抱えていたが,これを解決すると共に,改善されたシステムを用いて高温・超臨界状態における水の放射線分解プロセス,初期生成物の収量,反応性,吸収スペクトルなどの新しい知見が得られるようになった。また極性溶媒という観点から,水に留まらず各種アルコールについても研究を進め,本稿ではその全体も含めて述べる。
- 放射線誘導長寿命ラジカルがDNA損傷を起源としない発がん経路の引き金
渡邉正己(京大原子炉),菓子野元郎(大分大学),熊谷 純(名大) [PDFファイル(578 kB)]
放射線による細胞がん化は多段階の独立したDNA突然変異が関係するとするモデルが一般に支持されているが,がん化頻度は突然変異のそれより500〜1000倍高い。筆者等は放射線照射によって細胞中に生じる長寿命ラジカルが照射後のビタミンC添加で抑制されると同時に細胞がん化も抑制されることを見出している。また,放射線誘導がん細胞では染色体が異数化し,大幅な遺伝子発現攪乱が起きていることを見出した。このことは日本人集団の加齢に伴う異数化出現頻度ががん罹患率の年齢依存性とよく一致していることと矛盾しない。従って,染色体異数化が発がんの主たる起源であり,細胞内の酸化度上昇とそれに伴う長寿命ラジカルの発現が染色体異数化を促進させる原因である。
- ポリマーゲル線量計
林 慎一郎(広国大) [PDFファイル(430 kB)]
近年,正常な組織へのダメージを低減しつつ腫瘍の形に合わせて線量を集中させて照射を行う強度変調放射線治療や定位放射線治療,あるいは陽子線や炭素線を用いた粒子線治療等の高精度放射線治療が可能になってきている。それに伴いその3次元線量分布を直接測定できる線量計の開発が求められており,その候補としてポリマーゲル線量計が注目を集めている。ポリマーゲル線量計は放射線照射によって誘起されるゲル中でのビニルモノマーのラジカル重合反応を利用した3次元測定が可能な線量計である。本稿ではポリマーゲル線量計の概要と筆者らのデータからその基礎特性を示し,現状での可能性と問題点,および今後の展望について紹介する。
- とぴっくす
- 高分子捕集材等を用いた環境汚染除去技術の開発
伊藤久義,瀬古典明,黒木良太,矢板 毅,長縄弘親,中山真一(原子力機構) [PDFファイル(721 kB)]
福島原発事故で飛散した放射性物質による環境汚染を修復するため,高性能セシウム捕集材の創製研究を進め,セシウム吸着機能を持つ官能基を付加したグラフト重合捕集材,高いセシウム吸着選択性を有するタンパク質及びクラウンエーテル捕集材の開発に成功した。また,放射性物質を含む土壌の発塵を抑止しながら除去を行う実用的手法として,ポリイオン及びベントナイト(粘土)による土壌の固定・回収技術を開発した。本研究で開発した技術を用いて福島県飯舘村にてフィールド試験を実施した結果,優れた除染効果が確認され,当該技術の有効性が実証できた。
- グロー放電法によるかご型シルセスキオキサンへの水素原子の包接
駒口健治,播磨 裕(広大) [PDFファイル(356 kB)]
かご型オクタシルセスキオキサン((RSiO3/2)8, R=H, CH3, i-butyl, etc.)の粉末試料をグロー放電の雰囲気にさらすと,かご型骨格内に水素原子が包接されることを見出した。 (CH3SiO3/2)8への4分間の放電で得られる包接率は,単位かご当たり1.3 x 10-4であった。この値は,これまでに報告されているγ線(60Co)照射法で約300 kGy(通常,2日間以上の連続照射が必要)を照射したときの包接率に相当する。グロー放電処理は極めて簡単な方法であるにもかかわらず、包接反応を短時間で効率よく引き起こすことができる。
- 福井県立病院 陽子線がん治療センターの現状
山本和高(福井県立病院 陽子線がん治療センター) [PDFファイル(848 kB)]
福井県立病院 陽子線がん治療センターは,2011年3月より,日本海側では初となる陽子線治療を開始した。頭頚部腫瘍,肺がん,肝臓がん,前立腺がん等に対し治療基準を公表し,2012年1月末までに102例の治療を実施した。治療基準を満たしていない場合でも,福井県立病院のキャンサー・ボードで討議し了承されれば陽子線治療の対象としている。治療室3にはCT自動位置決めシステムと積層原体照射システムという新しい機能がそなえられており,がん近傍の正常組織への照射をさらに減らすことができると期待され,薬事法の認可を得られるように準備を進めている。
- 連載講座
- V. M. ビャーコフ・S. V. ステパノフ 放射線化学の基礎−放射線分解初期過程− 第2回
小林慶規(産総研),岡 壽崇(原子力機構) [PDFファイル(418 kB)]
- 連載記事
- 書評
- Radiation Processing of Polymer Materials and Its Industrial Application', Keizo Makuuchi and Song Cheng, Wiley
工藤久明(東大) [PDFファイル(106 kB)]
- 海外リポート [PDFファイル(401 kB)]
- 第14回ICRRに参加して 室屋裕佐(東大)
- 12th Tihany Symposium on Radiation Chemistry 参加報告 近藤孝文(阪大産研)
- ニュース [PDFファイル(377 kB)]
- 放射線化学若手の会夏の学校 新井見幸(東大)
- 第54回 放射線化学討論会参加報告(第1日) 岩松和宏(東大)
- 第54回 放射線化学討論会参加報告(第2日) 西田真麻(金沢大)
- 第54回 放射線化学討論会参加報告(第3日) 菅 晃一(阪大産研)
- 日本原子力学会「2011年秋の大会」参加記 熊谷友多(原子力機構)
- 第6回 高崎量子応用シンポジウム参加報告 大久保聡(早大)
- お知らせ [PDFファイル(106 kB)]
- 第55回 放射線化学討論会のお知らせ 越水正典(東北大院工)
- 本会記事 [PDFファイル・これ以降全て(131 kB)]
- 事務局より:理事会議事録等 平出哲也(原子力機構,事務局)
- 賛助会員名簿
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