2023年 学会誌 第116号

会誌「放射線化学」(ISSN 2188-0115
(PDFファイルを開くためにはパスワードが必要です.会員の方には,封書でお知らせしています.)

■2023 No.116 PDFファイル・全ページ

巻頭言

「多様性の放射線化学が未来を作る」
髙橋 憲司(金沢大学)[PDFファイル

 

展望・解説

「放射線プロセスによる高分子材料の改質ならびに新材料開発」
大島 明博(大阪大学)[PDFファイル

本稿では,放射線プロセスの基礎となる放射線照射による照射効果について,線源側の条件と対象材料側の条件に分けて,誘起される化学反応が異なることを解説する.放射線プロセスによる高分子材料の改質による材料開発においては,照射温度,照射雰囲気,線種等の照射条件のほか,照射対象となる高分子材料の立体構造,分子形態の違いにより,放射線で誘起される現象が異なる.また,工業的に使用されている高分子材料は多種多様であり,実際には酸化防止剤,充填剤,安定剤などの各種添加剤が微量に含まれており,実際の工業プロセスに適用するには適切な条件を設定する必要があるが,放射線プロセスは,触媒や反応開始剤は不要であり,世界的な化学物質の使用制限や規制などの環境問題をクリアする「ブループロセス」として産業発展の大きな可能性を秘めている.

 

とぴっくす

「放射線照射によって生じたDNA損傷の構造解析と修復速度」
中野 敏彰,赤松 憲,鹿園 直哉(QST関西)[PDFファイル

放射線は飛跡に沿って分子を電離することから照射された細胞では,飛跡と重なるDNA部位に高密度な損傷(クラスター損傷)が生じると考えられている.しかし,実験的に高密度損傷の存在を実証した研究はなかった.そこで申請者はこれまでに,原子間力顕微鏡(AFM)を用いクラスター損傷を個別に可視化・検出方法を確立し,放射線を照射したプラスミドに生じた損傷の解析を行い,LETの増加によりクラスター損傷を伴う損傷が増加している事を明らかにした.その後さらに系を発展させ,AFMによるDNA損傷の可視化分析技術を発展的に展開し,放射線を照射した細胞中のDNAでも検討する方法を確立した.本報告ではこの方法を用いて,鉄線およびX線を照射したヒトTK6細胞に生じたDNA損傷(孤立塩基損傷,シングルクラスター損傷,高密度クラスター損傷,DSB末端に塩基損傷を含む新たなDNA損傷(高密度DSB))の直接観察を行った.この系を軸に線質の違いによるDNA損傷の発生及び各DNA損傷の修復速度を求めた.

 

とぴっくす

「可視光を99.98%以上吸収する至高の暗黒シート」
雨宮 邦招,清水 雄平(産総研),越川 博,八巻 徹也(QST高崎)
PDFファイル

可視光の吸収率が99.98 %以上となる「至高の暗黒シート」を開発した.本技術は,イオンビーム照射と化学エッチングにより微細な円錐状の空洞を表面に敷き詰めたマスターモールドを形成し,その表面構造を光閉じ込め構造として黒色基材に転写する技術を発展させたものである.カシューオイル黒色樹脂は,基材内部からの散乱反射が極めて少なく,表面の鏡面反射(グレア)も光閉じ込め構造で抑制できるので,レーザーポインターの光が見えないほどの深みのある黒を実現した.可視光波長域での半球反射率は0.02 %以下であり,触れる耐久を有する素材としては過去最高の低反射率を実現した.

 

海外レポート

「32nd Miller Conference on Radiation Chemistry参加報告」
楠本 多聞(QST放医研)
「20th International Conference on Solid State Dosimetry(SSD20)参加報告」
越水 正典(静岡大学)
「17th International Congress for Radiation Research(ICRR 2023)参加報告」
前山 拓哉(北里大学)
PDFファイル

 

お知らせ

「第1回シンポジウム −次世代放射線計測に向けた放射線化学のアプローチ− 報告」
中川 清子(都産技研)
PDFファイル

 

会員のページ

「峯岸 安津子さんを偲んで」
中川 清子(都産技研)
「吉良さんから教わった基礎科学への心構え」
丑田 公規(北里大学)
「吉良 爽 元高輝度光科学研究センター理事長の思い出」
田川 精一(大阪大学)
PDFファイル

 

本会記事PDFファイル・これ以降全て

事務局より:理事会議事録等 (事務局)

賛助会員名簿