本稿では高エネルギーで加速された単一粒子を高分子薄膜に入射させた際,その軌跡に沿ったナノメートルスケールの1次元的な超微細空間内にのみ引き起こされる高分子架橋反応を利用して,架橋高分子ナノ細線を形成する一連の研究について紹介する。いわゆる「イオントラック」を,架橋高分子の「ひも」として可視化しうる本研究では,形成される細線のサイズを詳細に検討することによって,材料形成だけでなく,イオントラック内のエネルギー密度分布や高分子の分子サイズの実験的・定量的評価が可能である。また,太さや長さが均一な「ナノワイヤー」材料の形成法として考えた場合,電気特性評価・熱処理によるセラミックナノワイヤーの形成などが可能である。さらに単純な高分子多層膜の利用により,さまざまな組成を有する「ナノワイヤー連結体」が形成され,ベースとなる高分子の特性を利用した選択的凝集による多様な組織構造の実現についてもあわせて紹介する。